淡路牛すじボロネーゼ 天然酵母パン付き
淡路島揚げピザ
自家製の野菜酵母液
岩野 司
TSUKASA IWANO
「海鮮丼HINOMARU」オーナー
1947 年から続く淡路島の鮮魚仲買店、
いわの水産の 3 代目。
魚の魅力を伝えるため
2015 年に「あわじしま海鮮ちらし桜の木」を
2023 年に「海鮮丼 HINOMARU」をオープン。
魚の活け締めや下処理、
捌き方までを体験できる事業を計画中。
<かけがえのない漁業文化を守るオーナーの熱い思いに裏付けられた名店>
――地元淡路島で祖父から続く鮮魚仲買業をしてきた『いわの水産』 オーナーの岩野司さんに、淡路の魚に対するこだわりや思い、また人気のお店『海鮮丼 HINOMARU』について、お伺いしたいと思います。まず、お魚に対するお考えについてお聞かせいただけますか?
私自身、祖父からの家業を引き継ぎ、
「魚を見極め、仕入れて売る」という仕事に 30 年近く携わっていますが、
その中で、 漁師さんから消費者であるお客様まで、
みんなで魚の知識や漁業そのものを取り巻く環境について認識を共有して、
日本人と魚の歴史というものをこれからも大切に守っていきたい、
子どもたちに残していきたいと考えるようになりました。
特に昨今は、
SNS などで簡単に知識を得ることが可能となっていますが、
不正確な情報も少なくない。
私はお子様でも理解できる基礎知識から始めて、
まずは、 天然の魚の美味しさというものを知っていただきたいと思っています。
まずはそこがスタートです。
たとえば、 獲れたばかりの魚が一番新鮮で美味しいという話もありますが、
そうとは限りません。
漁の時、魚は網の中で暴れ、互いにぶつかり合い、
ものすごいストレスにさらされます。
そんな疲れ切った魚が美味しいはずがないのです。
まずは水槽で落ち着かせ、普段のような状態に一旦戻してあげることが重要です。
水の温度など、 生育条件は魚種によって異なるので、
それに合わせることも必要となります。
広い牧場で優雅に育てられた羊や牛の肉が、狭い家畜小屋に閉じ込められたものより美味しいのに似ていますね。
そんなことを由良の漁港に来ていただいて、
実際に水槽の魚を見て、 触っていただき、そして食べていただくことで、
魚に関する知識と美味しさを実感として理解していただきたいと考えています。
漁業も大量生産・大量消費の時代ではありません。
この 30 年間で付近の漁獲量は6分の1に激減しています。
同時に、由良の町も人口減少が進んでいます。
そういう状況下ですから、
漁師さんも、消費者のみなさんも、一尾一尾の魚について、
これがいかに貴重なものなのか理解して、
自然のありがたみというものを共有することが大切だと考えています。
そこに「天然ものならではのストーリー」を感じていただきたいと思います。
――最近は養殖の魚や海外からの輸入品が多いと思いますが、そこについてはどう思われますか?
まず養殖ですが、技術の向上で、とても美味しくなっていると思います。
これを食することに関しては、まったく問題はないでしょう。
養殖ものには、 天然ものと比べると味が劣るんじゃないかといった、
ネガティブなイメージがつきまといます。
しかし考えてみますと、
農業も牧畜業も人が手を加えて米や家畜を育てているのですから、
つまり「養殖」というわけです。
こちらは問題にならず、
漁業ばかり天然ものがもてはやされるというのもおかしな話です。
ですから、 単に養殖ものは評価が低いからという理由だけで、
天然ものを乱暴に市場に投入するだけでは、
漁業はさらに先細りするばかりです。
また、逆に、養殖もののレベルが高くなっているから天然ものは不要だ、
ということにもしたくありません。
食べるものは人がそれぞれに判断して選べばよいものです。
その中で、 淡路で獲れる魚、日本の魚はこんなに美味しいんだ、
ということを理解していただきたいと思っています。
スーパーなどで売られている輸入魚類についても同じです。
どこで獲れたか、なんという魚かわからず、
例えば塩鮭の切り身などは、
海にいるときも同じく切り身の状態で泳いでいると勘違いしている子どもがいるとか、冗談のような話もあります。
そういったお店では、
魚屋さんと会話しながらオーダーするということも難しくなっています。
魚は種類が多く、姿かたちも様々です。
魚を触ったことがないという人も多くなりました。
できれば、そういった基礎的な知識を、
実感できる形でお届けしたいと考えています。
知識があれば「おなかいっぱいになればいい」と割り切って食べる場合もあるでしょうし、
「天然ものだけど、本当に美味しいのかな」と思って食べる場合もあるでしょう。
漫然と食べるのでなく、そういう選択ができるということが肝心です。
輸入や養殖でビジネスとしての漁業を守ることも大切ですが、
正しい知識と自然への感謝の気持ちを漁師さんとお客様とが共有して、
日本の伝統的な漁業を守っていくことも本当に大切なことだと思います。
それが私の仕事かな、と思うのです。
これは日本の自然環境全体を考えることにもつながります。
――魚と漁業への熱い思いをお持ちの岩野さんが、鮮魚仲買業から一歩踏み出して経営を始めた『海鮮丼 HINOMARU』ですが、こちらについてご紹介いただけますか?
まず『海鮮ちらしと漁師鍋の店 桜の木』 ですが、
魚を卸しているお寿司屋さんのご主人から
「こんなに美味しい魚を取り扱っているのだから、 魚のアンテナショップとしてちらし寿司のお店をやってみたら?」とすすめられたのがきっかけです。
そのご主人から、
ネタの処理やお米の種類、炊き方、すし酢などすべてをご指導いただきました。
そういったノウハウを自分なりにアレンジして、
いまの味に仕上げていますが、 味の決め手となる、
「エビのおぼろ」だけはお寿司屋のご主人にお作りいただいています。
全体的にまろやかにまとめており、きっとまた食べたくなる味になっていると自負しています。
また、春に向けては、
お子様連れの若いご夫婦にも気軽に召し上がっていただけるように、
カジュアルなメニューを検討しています。
具材も小さく切り刻んで、
女性でも一口で味のハーモニーを感じていただけるような工夫も考えています。
淡路の魚の美味しさを手軽に楽しんでいただき、
それをきっかけに魚のことをより知っていただければと思います。
『海鮮丼 HINOMARU』ですが、
こちらはストレートに淡路の魚の美味しさを味わっていただきたいと思います。
ご飯は酢飯ではなく、白い温かなご飯です。
メニューとしては、
お刺身をそのまま召し上がっていただく海鮮丼と、
お刺身に味付けをして「づけ」にした日の丸海鮮漬け丼というものがあります。これは卵の黄身を中央に乗せて、
日の丸のような盛り付けになっています。
ここだけで食べられる個性的な海鮮丼です。
――二つのお店の特徴、違いを一言で表すとしたら、どういったものになりますか?
ちらし寿司は、 素材の美味しさはもちろん、
それに加えられた料理人の仕事ぶりと、
さまざまな味の複雑な絡み合いが特徴となります 。
いわば、「味の掛け算」を楽しんでいただきたいと思っています。
一方、海鮮丼は先に申し上げた通り、
淡路の魚の美味しさをストレートに表現したものです。
こちらは、食材の「味の足し算」を味わっていただきたいと思います。
これをきっかけに魚に関するお話にも、
ご興味を持っていただければと思います。
淡路の自然環境が生んだ食材の掛け算と足し算、
どちらも多くのみなさまにぜひとも味わっていただきたいです。
(表示価格は税込み・2024 年 4 月現在)
――地元淡路島で祖父から続く鮮魚仲買業をしてきた『いわの水産』 オーナーの岩野司さんに、淡路の魚に対するこだわりや思い、また人気のお店『海鮮ちらしと漁師鍋の店
桜の木』『海鮮丼 HINOMARU』について、お伺いしたいと思います。まず、お魚に対するお考えについてお聞かせいただけますか?